日本人の頭痛は「気象」と「姿勢」が大きく関わっている
日本は世界でも有数の「頭痛大国」といわれます。気圧の変化が大きい梅雨や台風シーズンに症状が増える点は、日本の気候ならでは。天気痛の研究で知られる名古屋大学の佐藤純博士らの臨床データでは、天候変化で不調を感じる人の約6割が女性で、平均年齢は40代前半。更年期や月経周期に伴うホルモンバランスの変動が、痛みの感じやすさに影響していると報告されています。
一方、働き方の変化も見逃せません。リモートワークの定着で自宅のダイニングチェアに長時間座り、ノートパソコンの画面をのぞき込む姿勢が続くと、後頭部から肩・首にかけての筋肉が固まり、締め付けられるような緊張型頭痛を引き起こします。頭痛外来の現場でも、デスクワーク中心の20〜40代の相談が増えているのが実情です。
頭痛には「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があります。脳腫瘍やくも膜下出血など病気が原因の二次性頭痛は命に関わるため、突然の激痛や意識障害を伴う場合は迷わず救急受診を。それ以外の多くは片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛に分けられ、それぞれ治療法が異なります。自己判断で鎮痛薬を飲み続ける前に、自分の頭痛のタイプを知ることが第一歩です。
自分に合った頭痛対策の選び方
1. 市販薬は「症状」と「成分」で選ぶ
ドラッグストアの鎮痛薬コーナーには多くの製品が並びますが、主な成分は大きく3種類です。
| 成分 | 代表的な市販薬 | 特徴 | こんな人におすすめ | 注意点 |
|---|
| ロキソプロフェン | ロキソニンS | 鎮痛効果が強く、効き始めが約30分と速い | ズキズキする片頭痛・歯痛・生理痛 | 空腹時は避け、食後か牛乳と一緒に |
| イブプロフェン | イブ、バファリンルナ | 抗炎症作用があり、炎症を伴う痛みに強い | 筋肉痛・肩こり由来の頭痛 | 胃への刺激があるため空腹時は注意 |
| アセトアミノフェン | タイレノール | 胃に最もやさしい | 胃が弱い人・軽度の頭痛 | 飲酒習慣がある人は用法用量を守る |
薬剤師の解説でもよく言われるのは、「有名だから」ではなく「症状と体質に合うか」で選ぶこと。週に2回以上、市販薬に頼っているなら、市販薬の使いすぎによる薬物乱用頭痛のリスクがあります。その場合は自己流をやめて医療機関へ。
2. 気圧の変化には「耳」からアプローチ
雨や台風の前に頭痛が来るタイプは、耳の奥にある内耳が気圧の変化を敏感にキャッチし、自律神経が乱れることが原因と考えられています。天気痛の第一人者である佐藤純医師が推奨するのが「耳くるくるマッサージ」。人差し指と中指で耳を挟み、軽く引っ張りながら前後に20回ほど回すだけ。たった1分で耳周りの血流が整い、気圧変化への過敏さが和らぎます。痛みが出る前に、天気予報で気圧低下がわかった時点で行うのがポイントです。
3. 片頭痛の予防は生活リズムの安定から
片頭痛は痛みが出てから薬で抑えるだけでなく、日々の生活習慣で「発作が起きにくい体」をつくることが近年の治療の中心になりつつあります。睡眠のリズムを一定に保つ、空腹や脱水を避ける、カフェインの摂取量を一定にする、有酸素運動を無理のない範囲で続ける——この4つが基本です。とくに休日の寝だめは、かえって片頭痛の引き金になることがあります。
頭痛日誌をつけるのも有効です。痛みの日時、強さ、天気、食事、睡眠時間を記録すると、自分だけの引き金が明確になります。スマートフォンの頭痛記録アプリを活用すれば、通院時に医師へ正確な情報を伝えられます。
4. 繰り返す頭痛は「頭痛外来」へ
月に何度も頭痛がある、市販薬の回数が増えている、仕事や学校を休むことがある——そんな状態が続くなら、脳神経内科や脳神経外科の頭痛外来の受診を検討しましょう。日本頭痛学会のガイドラインによると、片頭痛は日本人の8.4%が悩む神経疾患で、20〜40代の女性に多く、男性の約3.6倍の有病率とされています。近年はCGRP関連薬など予防薬の選択肢も広がり、従来「付き合うしかない」と思われていた頭痛が、専門医の診察で大幅に改善できるケースが増えています。
頭痛外来は全国の主要都市にあり、脳神経外科や脳神経内科を標榜するクリニックが対応しています。初診は予約制のところが多く、問診で頭痛のタイプを見極めたうえで、必要に応じてMRI検査などが行われます。
今日から始める3つのステップ
- 自分の頭痛タイプを知る:痛み方(ズキズキか、締め付けか)、場所、頻度を1週間記録してみましょう
- 生活リズムを整える:睡眠時間を一定にし、こまめな水分補給と軽いストレッチを習慣に
- 受診の目安を持つ:週2回以上の服薬、吐き気を伴う強い痛み、手足のしびれを伴う場合は早めに頭痛外来へ
天気予報アプリに気圧グラフを表示する設定にしておくと、痛くなる前に準備できるのでおすすめです。頭痛は「我慢するもの」ではありません。適切な対策と専門医の力を借りれば、雨の日も、忙しい日も、快適に過ごすことは十分可能です。まずは自分に合った一歩から始めてみてください。