日本人に多い頭痛のタイプと、見逃されがちなサイン
頭痛を大きく分けると、病気が原因で起こる「二次性頭痛」と、頭痛そのものが疾患である「一次性頭痛」に分類される。一次性頭痛の代表格が片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つだ。
片頭痛は「ズキズキと脈打つような痛み」で、吐き気や光・音への過敏を伴うことが多い。一方、緊張型頭痛は「頭を締め付けられるような鈍い痛み」で、日本人に最も多いタイプとされる。デスクワークの増加やスマートフォンの長時間使用で、肩こりや首こりをきっかけに発症するケースが目立つ。群発頭痛は片側の目の奥がえぐられるような激痛が特徴で、患者数は少ないものの、痛みの強さから「自殺頭痛」と呼ばれることもある。
ここで注意したいのが「薬物乱用頭痛」だ。市販の鎮痛薬を月に10日以上、3か月以上使い続けると、逆に頭痛が慢性化するリスクがある。日本頭痛学会の基準では、このラインを超えた服用は危険水域とされている。「薬が効かなくなった」「飲まないと頭痛が起きる」という状態は、専門医の介入が必要なサインだ。
気圧変化と頭痛:日本の気候ならではの悩み
日本に住む人に特有の悩みとして、気圧の変化による頭痛がある。梅雨入り前後の不安定な天気、台風シーズン、冬の爆弾低気圧——こうした気圧の乱高下が頭痛を引き起こすことは、多くの患者が実感しているところだ。気圧を感知するセンサーが耳の奥(内耳)にあり、気圧変化が脳内の神経活動を活性化させて痛みを引き起こすという研究報告もある。
特に東日本と西日本では、頭痛の悩み方に微妙な違いが見られる。東京など関東平野部では、夏日と冬日が交互に来る季節の変わり目に体調を崩す人が多い。一方、大阪や福岡など西日本では、台風接近時の急激な気圧低下に反応する人が目立つ。北海道では冬季の日照不足と寒暖差が重なり、頭痛に加えて気分の落ち込みを訴える人も少なくない。
気象そのものを変えることはできないが、天気予報アプリで気圧の変化を事前に把握し、雨の前日に無理な予定を入れないといった工夫は効果的だ。低気圧が近づく日は、睡眠をいつもより30分長めに取るだけでも負担が軽くなる。
受診の流れと治療の選択肢
頭痛で医療機関を受診する場合、まずかかりつけ内科や神経内科で診察を受けるのが一般的だ。問診で痛みの頻度や性質、誘因を確認し、必要に応じてMRIやCTといった画像検査を行う。危険な頭痛のサイン(突然の激痛、発熱を伴う頭痛、手足のしびれ、50歳を過ぎて初めて起きた強い頭痛など)があれば、緊急性の高い脳疾患を疑って精査される。
診断がついたら、治療は大きく「急性期治療」と「予防治療」の二本立てで進む。急性期治療は発作が起きたときに痛みを抑える薬で、市販のロキソニンやイブ、処方薬のトリプタン製剤などが用いられる。一方、予防治療は頭痛の頻度そのものを減らすためのもので、月に2回以上発作がある人や、生活に支障をきたしている人が対象になる。
近年注目されているのが、CGRP関連の新しい治療薬だ。このうち「ナルティークOD錠75mg(一般名:リメゲパント)」は、急性期治療と予防治療の両方に使える日本初の経口薬として、国内の頭痛外来で処方が広がっている。従来は「痛いときに飲む薬」と「発作を防ぐ薬」を別々に使う必要があったが、この薬は1種類で両方の役割を担える点が画期的とされる。
治療の選択肢をまとめると、次のようになる。
| 治療カテゴリー | 代表的な選択肢 | 費用感 | こんな人に向く | 主な利点 | 注意点 |
|---|
| 市販薬(急性期) | ロキソニンS、イブ、バファリンなど | 1箱あたり数百円〜千円程度 | 月数回以下の軽度な頭痛 | 薬局で手軽に入手できる | 月10日以上の連用で薬物乱用頭痛のリスク |
| 処方薬(急性期) | トリプタン製剤(スマトリプタン、ゾルミトリプタンなど) | 保険診療で3割負担 | 片頭痛の発作が重く市販薬が効かない人 | 片頭痛に特化した高い効果 | 心血管系の持病がある人は使用不可の場合あり |
| 処方薬(予防治療) | CGRP関連薬、抗てんかん薬、漢方薬など | 保険診療で3割負担 | 月2回以上の発作がある人、慢性化した頭痛 | 発作の頻度そのものを減らせる | 効果が出るまで数週間かかる |
| 新世代経口薬 | リメゲパント(ナルティーク) | 保険診療で3割負担 | 急性期と予防の両方を1つの薬で管理したい人 | 服用の手間が少ない | 処方できる医療機関が限られる場合あり |
なお、治療費は健康保険が適用されるため、自己負担額は診療内容によって異なる。気になる場合は、受診時に医療機関で確認するのが確実だ。
頭痛ダイアリーと地域の専門外来の活用
頭痛の診断を正確にするために欠かせないのが「頭痛ダイアリー」だ。日本頭痛学会のサイトからPDFをダウンロードでき、頭痛が起きた日時、痛みの程度、服用した薬とその効果、月経周期、気圧や天気などの記録を4週間単位でつけられる。これを診察時に持参すると、医師が頭痛のパターンを把握しやすくなり、適切な治療薬の選択につながる。
専門的な治療を希望するなら、頭痛外来の受診が選択肢に入る。頭痛外来は神経内科や脳神経外科を標榜する医療機関に設けられていることが多く、日本頭痛学会の専門医が在籍するクリニックも増えている。東京都内では赤坂や品川エリアに頭痛専門のクリニックが複数あり、初診から予防治療まで一貫した対応を受けられる。地方都市でも、大学病院の脳神経内科に頭痛外来を設ける施設が増えてきた。
受診の際は、これまでの頭痛の頻度や市販薬の使用状況をまとめておくと診察がスムーズだ。「月に何回頭痛があるか」「どんなときに悪化するか」を事前に書き出しておくだけで、医師との会話の質が大きく変わる。
日常生活でできるセルフケア
薬に頼りすぎず、日常生活のなかで頭痛を減らす工夫も重要だ。まず睡眠のリズムを整えること。寝不足も寝すぎも頭痛の誘因になるため、就寝時間と起床時間を一定に保つことが基本になる。カフェインは適量なら頭痛薬の効果を補助するが、依存状態になると逆効果だ。コーヒーやエナジードリンクの過剰摂取には注意したい。
食事面では、空腹の時間が長いと頭痛を誘発することがある。とくに片頭痛の人は、チョコレートやチーズ、赤ワインなどが引き金になるケースが知られている。完全に避ける必要はないが、自分にとっての誘因を頭痛ダイアリーで把握しておくと安心だ。
運動は緊張型頭痛の予防に役立つ一方、片頭痛の人では激しい運動が発作の引き金になることもある。ウォーキングやヨガなど、負荷の軽い運動から始めるのが無難だ。職場のデスクワークで首や肩が凝りやすい人は、1時間に1回は立ち上がって軽くストレッチをする習慣をつけたい。
頭痛と長く付き合ううえで大切なのは、「痛くなってからどうするか」ではなく、「どうすれば発作を減らせるか」という視点に切り替えることだ。月に数回の頭痛でも、仕事のパフォーマンスや家族との時間に影響が出ているなら、それは十分に治療の対象になる。かかりつけ医に相談するか、お住まいの地域の頭痛外来を一度のぞいてみてほしい。適切な治療に出会えば、頭痛に振り回されない毎日は思ったより近いところにある。