頭痛を放置すると何が起こるのか
頭痛には大きく分けて、検査しても原因の病気が見つからない「一次性頭痛」と、脳出血や脳腫瘍などが原因の「二次性頭痛」があります。一次性頭痛の代表格が片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つです。
片頭痛はズキズキと脈打つような痛みで、吐き気や光・音への過敏を伴います。緊張型頭痛は頭全体を締め付けられるような重い痛みで、肩や首のこりが関係します。群発頭痛は目の奥をえぐられるような激痛が、一定期間に集中して起こるものです。
困ったことに、これらの頭痛は放置すると悪循環に陥ります。仕事や家事に支障が出るだけでなく、痛みを紛らわそうと市販薬を頻繁に飲むことで「薬物乱用頭痛(MOH)」を招くケースも少なくありません。月に10日以上鎮痛薬を飲んでいる方は、その危険性が高いと言えます。
ある調査では、片頭痛の患者さんは日本に約840万人いると推定されていますが、適切な医療機関を受診しているのはその一部にすぎません。「いつもの頭痛だから」と我慢し続けることが、かえって症状を慢性化させるのです。
痛みのタイプ別・市販薬と処方薬の使い分け
頭痛薬を選ぶとき、まず知っておきたいのが「自分の頭痛のタイプ」です。
市販薬でよく使われる成分は、ロキソプロフェン(ロキソニン)、イブプロフェン(イブ)、アセトアミノフェン(タイレノール)の3つです。ロキソプロフェンは炎症を伴う強い痛みに即効性があり、アセトアミノフェンは胃への負担が少なく、妊婦さんや子どもでも使いやすいのが特徴です。
ただし、片頭痛が中等度以上の場合、市販の鎮痛薬では十分な効果が得られないことが多いです。その場合は医療機関で処方される「トリプタン系薬剤」が効果を発揮します。トリプタンはNSAIDsと違い、片頭痛特有の病態そのものに直接作用する薬です。
国内で使われているトリプタンは5種類あり、速さ重視ならマクサルト、効果の切れ味ならレルパックス、再発予防ならアマージ、剤形で選ぶならイミグラン、バランス型ならゾーミッグというのが基本的な使い分けです。心血管や脳血管の病気がある方は使えない禁忌薬でもあるため、必ず医師の判断が必要です。
近年は、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の働きを抑える新しい治療薬も登場しています。月1回の注射で発作を予防するCGRP関連抗体薬や、内服のゲパント系薬剤があり、日本頭痛学会のポジションステートメントでも第一選択薬として推奨されています。
| 種類 | 代表的な薬 | 特徴 | 理想的な使い方 | 注意点 |
|---|
| 市販のNSAIDs | ロキソニンS、イブA錠 | 炎症や痛みを抑える | 軽度〜中等度の痛みの初期に | 月10日以上の使用はMOHのリスク |
| トリプタン系 | イミグラン、マクサルト、レルパックスなど | 片頭痛特有の病態に直接作用 | 発作が出たらできるだけ早く | 心血管疾患がある方は禁忌 |
| CGRP関連抗体薬 | エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ | 月1回の注射で発作を予防 | 発作頻度が高い方の予防療法 | 医療機関での処方が必要 |
| ゲパント系内服薬 | ナルティーク | CGRPを抑える内服薬 | 急性期治療と予防の両方に | 注射に抵抗がある方にも選択肢 |
薬は「痛みが出たらできるだけ早く飲む」ことが鉄則です。遅れて飲むと効果が落ちます。また、吐き気が強い方は、錠剤を飲めないこともあるため、その場合は口腔内崩壊錠や点鼻薬、注射など、剤形も選べることを覚えておいてください。
気圧と天気に左右される頭痛への対策
日本に住んでいると、雨の前や台風の接近時に頭痛が悪化する経験をした方は多いはずです。これは「天気痛」あるいは「気象病」と呼ばれ、医学的にも認知されている症状です。低気圧が近づくと内耳の気圧センサーが反応し、自律神経のバランスが乱れて血管が拡張し、頭痛を引き起こすと考えられています。
天気痛の特徴は、天気が崩れる前日から頭が重くなり始め、低気圧が通過するときに痛みのピークを迎えることです。めまいや吐き気、肩こりを伴うこともあります。
対策としては、以下のような方法があります。
- 天気予報アプリで気圧の変化を先読みする。気圧が下がり始める前に、早めに休息を取る
- 耳まわりの血行を促す。耳を軽く引っ張ったり、マッサージして血流を改善する
- 入浴で体を温める。ぬるめのお湯にゆっくり浸かり、副交感神経を優位にする
- カフェインを適度に摂る。コーヒーや緑茶は血管を収縮させ、痛みを和らげる助けになることがある
- 睡眠をしっかり確保する。気圧が変わる日は特に、疲れをためないことが大切
東北地方や日本海側の地域は、冬の低気圧の影響を受けやすく、天気痛に悩む人が多いと言われています。逆に、九州や沖縄は台風シーズンの気圧変化が大きな負担になります。自分の住む地域の気象パターンを把握しておくと、対策のタイミングを掴みやすくなります。
頭痛外来の選び方と受診の流れ
「そろそろ専門医に相談したい」と思ったら、まずは脳神経内科または脳神経外科の「頭痛外来」を探してみましょう。日本頭痛学会が認定する頭痛専門医が在籍するクリニックなら、より適切な診断と治療が期待できます。
受診の流れはおおよそ次の通りです。
- 予約。多くのクリニックはWeb予約に対応しており、「頭痛外来 予約 地域名」で検索すると見つかります。頭痛がつらい日は通院自体が負担になるため、オンライン診療に対応しているクリニックも増えています
- 問診。頭痛の頻度、痛みの性質、きっかけ、市販薬の使用状況などを詳しく聞かれます。頭痛ダイアリー(記録帳)をつけていくと、診断の精度が上がります
- 検査。必要に応じてMRIやCT検査を行い、脳に異常がないかを確認します。二次性頭痛の可能性を除外する大切なステップです
- 治療方針の決定。一次性頭痛と診断されれば、急性期治療の薬と、必要に応じて予防療法が提案されます
「頭痛ダイアリー」は、いつ、どんなときに、どのくらいの痛みがあったかを記録するものです。アプリ版も多数あるので、スマホで簡単に続けられます。これがあると、医師との会話がスムーズになり、自分に合った治療法を見つけやすくなります。
予防治療は、発作の回数が月に2回以上ある場合や、発作が重度で日常生活に大きな支障がある場合に検討されます。従来はβ遮断薬や抗てんかん薬などが使われていましたが、近年はCGRP関連抗体薬という新しい選択肢が加わりました。月1回の注射で効果が持続するため、毎日薬を飲むのが難しい方にも使いやすい治療法です。
地域で見つける、あなたに合った頭痛ケア
頭痛対策は、かかりつけのクリニックだけで完結するものではありません。地域の資源をうまく組み合わせることで、より充実したケアが可能になります。
都市部では、脳神経外科や脳神経内科のクリニックが充実しており、夜間や土日も診療しているところがあります。仕事を休みたくない方は、オンライン診療アプリを活用するのも一つの方法です。処方された薬は最寄りの薬局で受け取れるため、移動の負担も少なくて済みます。
一方、地方では総合病院の脳神経内科が頭痛診療の中心となることが多いです。かかりつけ医に相談して、必要に応じて紹介状を書いてもらう流れがスムーズです。
薬局での相談も有効です。薬剤師は市販薬と処方薬の使い分けに詳しく、「最近、頭痛薬を飲む回数が増えた」という相談にも乗ってくれます。薬物乱用頭痛のリスクを早期に察知して、医療機関への受診を促してくれる存在です。
また、整体やカイロプラクティックの施術で、肩こりや姿勢の歪みからくる緊張型頭痛の改善を図る方もいます。気圧による頭痛に悩む方には、耳まわりのケアや頭頸部のマッサージを取り入れている施設もあります。
どんな方法を選ぶにしても、大切なのは「自分の頭痛のタイプを知ること」です。片頭痛なのか、緊張型頭痛なのか、天気痛なのか。原因が違えば、対処法も変わります。
痛みを我慢するのは、もうやめにしませんか。頭痛は治療できる病気です。市販薬の使用頻度が増えてきた方、頭痛のパターンが変わってきた方は、一度、専門医に相談してみてください。あなたに合った治療法が見つかれば、「頭痛のない日」はきっと増えていきます。