保険料を動かす四つの要素
自動車保険の保険料は、大きく四つの要素で決まる。等級、運転者年齢条件、地域、そして補償の範囲だ。この四つを押さえれば、見積もりの数字がなぜその金額なのか理解できる。
等級は「ノンフリート等級」と呼ばれ、1等級から20等級まである。無事故で1年更新するごとに1等級上がり、20等級では最大63%の割引が適用される。反対に新規契約は6等級スタートで、割引は13%にとどまる。同じ車、同じ運転者でも、等級だけで保険料が倍近く変わるのはこのためだ。事故を起こして3等級ダウンすると、その後3年間は「事故あり」の割増率が続く。小さな物損事故を保険で直すかどうか迷うのは、この3年間の負担を考えるからだろう。
年齢条件も影響が大きい。契約時に「全年齢」「21歳以上」「26歳以上」「30歳以上または35歳以上」から選ぶ仕組みで、条件を絞るほど保険料は下がる。あるネット型保険会社の試算では、37歳・20等級・プリウスという条件で、全年齢補償が136,880円、26歳以上補償が55,570円、35歳以上補償が54,670円だった。年齢条件を一つ変えるだけで、年間の負担が半分近くになる。
ただし、この条件は家族以外の友人知人にも適用される。20歳の子どもがいる家庭で「26歳以上」にすると、その子が事故を起こしたときは補償の対象外になる。別居していて未婚の子は例外として扱われることが多いが、同居の家族は範囲に入る。誰がハンドルを握るかを先に書き出してから決めたい。
地域による差も無視できない。保険料の基礎になる率は都道府県ごとに設定されていて、交通量の多い都市部や事故率の高い地域では割高になりやすい。沖縄は本土と異なる料率が使われるなど、同じ条件でも住む場所で数千円から1万円台の差が出る。引っ越しを機に保険料が変わった、という話は珍しくない。
そして四つ目が補償の中身だ。対人賠償と対物賠償は無制限が基本だが、車両保険を付けるか、免責金額をいくらにするか、人身傷害保険をいくらにするかで保険料は動く。ここを削るかどうかは、保険料ではなく、もしものときに自分がいくら払えるかで決めるべき部分だ。
自賠責保険だけでは足りない
自賠責保険はすべての車に義務付けられている。現行の保険料は自家用乗用車の24ヶ月契約で17,650円、36ヶ月契約で23,690円、軽自動車の24ヶ月契約で17,540円。車検のたびにまとめて払っている人も多いだろう。
この保険が補償するのは、事故の相手のケガだけだ。傷害で最大120万円、後遺障害は75万円から4,000万円、死亡は最大3,000万円。相手の車や建物を壊したときの修理代、自分のケガ、自分の車の損傷は一切出ない。自賠責の範囲だけで足りる事故は、ほとんどないと考えたほうがいい。
だから任意保険が必要になる。対人賠償と対物賠償を無制限にしておけば、高額な賠償でも対応できる。人身傷害保険を付けておけば、自分のケガも治療費や休業損害までカバーされる。示談交渉を保険会社が代行するかどうかも、契約前に確認しておきたい点だ。
補償の組み合わせを整理する
| 補償・サービス | 内容の目安 | 費用の目安 | 向いている人 | 注意点 |
|---|
| 自賠責保険(強制) | 相手のケガのみ。傷害120万円、死亡3,000万円が上限 | 自家用乗用車24ヶ月で17,650円 | すべての車 | 物損と自分のケガは対象外 |
| 対人・対物賠償(任意) | 対人無制限、対物無制限が基本形 | 等級・年齢・地域で大きく変動 | すべての契約者 | 示談代行の有無を確認 |
| 人身傷害保険 | 3,000万円程度を一つの目安に設定 | 数百円から数千円の上乗せ例が多い | 家族で車を共用する世帯 | 実損払いか定額かで支払いが変わる |
| 車両保険 | 一般型とエコノミー型。免責5万〜10万円の設定も | 車両価格と等級で変動。エコノミー型は一般型より安い | 新車、ローン返済中の車 | 自損事故が対象外になる型がある |
| 弁護士費用等特約 | 相手との交渉を弁護士に依頼するための費用 | 月数百円程度の上乗せ例が多い | 全契約者 | 対象になる事故の範囲を確認 |
| ロードサービス | レッカー、バッテリー上がり、ガス欠対応 | 特約または付帯サービスとして提供 | 地方在住、高速道路をよく使う人 | 無料距離を超えると実費 |
表の金額はあくまで目安で、契約条件によって変わる。同じ「人身傷害3,000万円」でも、保険会社によって保険料も支払い方法も違う。
削るより先に、残すものを決める
保険料を下げたいとき、多くの人が車両保険を外す。車の時価が下がった中古車なら合理的な判断だ。ただ、ローンが残っている車や、修理代をすぐに用意できない場合は、エコノミー型に切り替えて免責金額を上げるほうが現実的だろう。
逆に残しておきたいのが人身傷害保険と弁護士費用等特約だ。通院が長引けば治療費と休業損害は膨らむ。相手との示談がこじれたとき、自分で交渉するのは負担が大きい。月に数百円の特約で、その負担を避けられるなら悪くない。
ロードサービスも見落としやすい。パンクやバッテリー上がりは、郊外や夜間に起きる。JAFの会員サービスと保険の付帯サービスが重なっていないか、無料で対応できる距離はどこまでかを確認しておくと、いざというときに慌てずに済む。
最近はドライブレコーダーの映像を事故対応に使う保険会社が増えた。運転の診断結果に応じて翌年の保険料が変わる仕組みを取り入れているところもある。安全運転に自信がある人なら、こうした仕組みを選ぶ意味はある。
見積もりで比べるときの注意
複数社を比べるとき、条件を揃えないと意味がない。等級、年齢条件、車両保険の有無、免責金額、人身傷害の金額を同じにしてから比較する。大手の代理店型とネット型では、同じ補償でも保険料に差が出ることがある。ゴールド免許割引は大手損保で16%前後が一つの目安だが、割引の名称と率は会社ごとに違う。
等級は、条件を満たせば家族間で引き継げる。親が積み上げた等級を子どもに移せば、新規の6等級から始めるより負担は軽い。ただし名義変更の手続きが必要で、別居の親族では引き継げない場合がある。契約前に保険会社へ確認しておきたい。
見積もりは一括見積もりサービスを使うと一度に複数社を比べられる。ただし、そこで出た金額は入力条件に基づく試算だ。実際の保険料は、運転者限定の範囲や使用目的の申告によって変わる。申告漏れがあると、事故のときに補償が減ることもある。
更新前にやっておくこと
- 保険証券を開き、等級、年齢条件、車両保険の免責金額を確認する
- 普段ハンドルを握る人を全員書き出す。同居の家族と、月に一度運転する親族では条件が変わる
- 21歳、26歳、30歳、35歳の誕生日が近い人がいないか確認する。該当すれば契約途中でも条件を変更でき、多くの場合、差額が返ってくる
- 同じ条件で3社以上の見積もりを並べる。保険料だけでなく、事故対応の窓口と示談代行の範囲も比べる
- 判断に迷ったら、日本損害保険協会の相談窓口や、都道府県の交通事故相談所を利用する。契約内容の確認や事故の相談に応じてくれる
更新の1か月前、証券を一枚広げてみる。等級がいくつで、誰が運転する前提になっているのか。それだけで、払いすぎに気づけることがある。条件を変えたら、同じ補償内容のまま複数社の見積もりを並べてみよう。数字が変わらないなら、今の契約は妥当だ。