頭痛はなぜ起きるのか。タイプを知ることが第一歩
頭痛を大きく分けると、病気のサインとして現れる「二次性頭痛」と、そうでない「一次性頭痛」に分かれる。一次性頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛があり、日本人に多いのは片頭痛と緊張型頭痛の二つだ。
片頭痛は、片側または両側がズキンズキンと脈打つように痛むのが特徴。光や音、匂いに敏感になり、吐き気を伴うこともある。一方、緊張型頭痛は頭全体がギュッと締め付けられるような痛みで、デスクワークやスマホの長時間使用による首や肩の筋肉の緊張が関係している。
近年の研究では、片頭痛の仕組みは「三叉神経血管説」で説明される。何らかの刺激で三叉神経が興奮し、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という炎症性の神経伝達物質が放出される。これが血管を拡張させ、周囲に神経原性炎症を起こして痛みとして感じられる。つまり片頭痛は単なる「痛み」ではなく、神経と血管が連鎖する炎症反応だという理解が広がっている。
日本の職場や学校では、この痛みを我慢してしまう文化がまだ根強い。「頭痛くらいで休むのは申し訳ない」と、市販の鎮痛薬を飲み続ける人も多い。だが、その習慣がかえって頭痛を悪化させることがある。薬剤の使用過多による頭痛、いわゆる薬物乱用頭痛だ。急性期の治療薬を月10日以上、あるいは3ヶ月を超えて連日のように服用すると、頭痛が慢性化するリスクがある。頭痛に詳しい医師の間では、この問題が長年指摘されている。
治療の選択肢は増えている。2026年の今、知っておきたいこと
片頭痛の治療は「急性期治療」と「予防療法」に分かれる。急性期治療は、発作が起きたときに速やかに痛みを抑えるためのもの。軽度から中等度の痛みには消炎鎮痛薬(NSAIDs)が使われ、効果が不十分な場合や中等度以上の痛みにはトリプタン系薬剤が推奨される。トリプタンは2000年から日本で発売され、現在は5ブランド10製剤が使われている。
トリプタンのポイントは服用のタイミングだ。片頭痛が始まったら1時間以内に飲むのが効果的で、遅くなるとアロディニア(皮膚が敏感になり、ブラシや櫛が痛く感じられる現象)を併発して効果が十分に得られない。痛みが軽度のうちに、早めに飲むことが大切だ。
さらに近年、治療の幅が広がっている。2022年からはジタン系のレイボーが処方可能になり、2025年9月には経口CGRP受容体拮抗薬のナルティーク(リメゲパント)が承認された。2026年4月にはアクイプタ(アトゲパント)も発売され、日本でも経口ゲパント時代に入った。これらの薬は、トリプタンが使いにくい心血管リスクのある患者でも選択肢となる。
予防療法も進んでいる。片頭痛発作が月2回以上ある場合や、生活に支障をきたす頭痛が月3日以上ある場合は、予防薬の対象となる。2021年からは抗CGRP関連抗体の注射薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)も登場し、月1回または3ヶ月に1回の皮下注射で発作そのものを抑えることができるようになった。
タイプ別・治療の比較
| 頭痛のタイプ | 主な症状 | 治療の第一選択 | 特徴 | 注意点 |
|---|
| 片頭痛 | 拍動性の痛み、吐き気、光・音過敏 | トリプタン系、ジタン、ゲパント | 早めの服用が効果を左右する | 月10日以上の服用は薬物乱用頭痛のリスク |
| 緊張型頭痛 | 頭全体の締め付け感 | 消炎鎮痛薬、筋弛緩、生活習慣の見直し | ストレスや姿勢が大きく影響 | 長時間のデスクワークは悪化要因 |
| 群発頭痛 | 片側の目の奥の激痛 | 専門医による急性期治療 | 発作が数週間続く期間がある | 必ず専門医の診察が必要 |
| 気圧による頭痛 | 天気が崩れる前後の頭重感 | 生活習慣の調整、症状に応じた内服 | 気圧変化が刺激となる | 気象情報を活用した予防が有効 |
頭痛外来という選択肢。どこで相談するか
市販薬でやり過ごしている人に、まず勧めたいのが「頭痛外来」の受診だ。日本医師会の情報でも、頭痛には大きな病気が隠れていることがあるため、かかりつけ医に相談したり、頭痛外来やストレス外来に行くことが推奨されている。
頭痛外来では、問診の後に必要に応じてMRIやCTで画像検査を行い、頭痛のタイプを判断する。東京都大田区の例を見ると、矢口渡脳神経クリニックでは土曜日の午前中まで診療しており、MRIやCTの結果をもとに頭痛のタイプを判断し、内服薬や注射薬による治療を行っている。せき山王クリニックは大森駅から徒歩1分とアクセスが良く、仕事帰りでも通院しやすい。
関西では、大阪頭痛脳神経クリニックが2026年4月に開院した。JR大阪駅や梅田からすぐの場所にあり、平日は20時まで、土曜日も診療している。当日MRI検査が可能で、頭痛だけでなく物忘れや認知症にも対応している。こうした専門クリニックは全国の主要都市に増えており、「頭痛外来 おすすめ」で検索すれば、自分の地域の医療機関が見つかるはずだ。
自分でできること。生活習慣の見直しから始める
薬だけに頼らない対処法も重要だ。頭痛の予防には、睡眠やストレス、生活リズムの改善が効果的とされる。具体的には、寝る1時間前には照明を暗くしてスマホやパソコンを見ない、起床後すぐにカーテンを開けて自然光を浴びる、昼休みに5分間外の空気を吸いながら深呼吸する、就寝前に首や肩をゆっくり回してストレッチする。これだけでも自律神経が整い、頭痛の頻度や強度を抑える効果が期待できる。
気圧の変化による頭痛に悩む人も多い。天気が崩れる前日から頭が重くなり、低気圧が通過するときに痛みのピークを迎えるパターンだ。三鷹のファミリーカイロプラクティックでは32年間の臨床経験から、気圧頭痛は姿勢や筋肉の状態と関係が深いとしている。気象情報アプリで気圧の変化を事前にチェックし、雨の前日に無理をしないという工夫も有効だ。
頭痛を記録して、受診の材料にする
頭痛外来を受診する前に、1〜2ヶ月ほど頭痛日記をつけることを勧める。いつ、どのくらいの強さで、どんな痛みだったか。その日に何を食べたか、睡眠時間はどれくらいだったか。これを記録しておくと、医師の診断がスムーズになる。片頭痛の診断には、問診で得られる情報が非常に重要だからだ。
受診の目安としては、月に2回以上頭痛がある、市販薬を月に10日以上飲んでいる、痛みで仕事や家事に支障が出ている、という三つのサインがある。どれかに当てはまるなら、早めに専門医へ。頭痛は我慢するものではなく、治療できるものだという認識が、2026年の日本では広がりつつある。自分の頭痛のタイプを知り、適切な治療と生活習慣の改善を組み合わせれば、痛みと上手に付き合う道は開けるはずだ。