事故後の示談交渉、本当にこの金額で合っていますか
日本の交通事故では、加害者側の保険会社が被害者に対して示談を持ちかけてくるのが一般的です。ところがこのとき、保険会社が提示する金額は、あくまで自賠責保険の基準(いわゆる「自賠責基準」) に基づいていることがほとんどです。これは法律上の最低限の枠組みで、実際に裁判で認められる弁護士基準とは大きく差が出ることがあります。
たとえば後遺症が残ったケースでは、その差は数百万円単位になることも珍しくありません。多くの被害者はこの仕組みを知らず、提示額をそのまま受け入れてしまいます。慰謝料の計算方法一つ取っても、通院日数や治療期間のどちらを基準にするかで金額が変わってくるのです。
相手の保険会社は損害保険会社の社員であり、あなたの味方ではありません。あくまで自社の支払いを抑える立場です。だからこそ、公正な第三者として交渉してくれる弁護士の存在が重要になるのです。
弁護士に依頼すると何が変わるのか
計算基準の違いがそのまま金額の差に
先ほど触れたように、交通事故の賠償金には大きく分けて次の三つの基準があります。
| 基準 | 特徴 | 想定される金額の水準 | 向いているケース |
|---|
| 自賠責基準 | 法律上の最低限の枠組み。保険会社の提示額の基礎 | 最も低い | 軽いむち打ちなど短期間で完治する場合 |
| 任意保険基準 | 各保険会社が独自に定める算定方式 | 自賠責よりやや高い | 保険会社との示談交渉を円滑に進めたい場合 |
| 弁護士基準 | 裁判実務で実際に認められる算定方式 | 最も高い | 後遺症が残る、休業が長引くなど重大なケース |
弁護士基準は裁判の判例に基づくため、交渉材料としても強い説得力を持ちます。実際、弁護士が介入すると示談金が数割程度増額したという報告は数多くあります。むち打ち程度の軽症でも、治療日数が長引けば差は無視できません。
過失割合の争いも弁護士の仕事
事故の責任割合を示す過失割合。これは事故類型ごとに「別冊判例タイムズ」などの基準書に沿って決められますが、保険会社が最初に提示する数字が正しいとは限りません。信号のない交差点や見通しの悪い場所での事故では、細かい事実関係で割合が大きく変わることもあります。
たとえば相手の車が10割悪いと思っていても、保険会社が「あなたにも2割の過失がある」と主張すれば、受け取れる賠償金はその分だけ減ります。こうした過失割合の交渉は、専門知識のない一般の方には非常に難しいものです。弁護士は現場の状況や判例を照らし合わせて、適正な割合を主張してくれます。
費用面が不安でも、依頼できる仕組みがある
弁護士費用は気になるところでしょう。着手金と成功報酬が主な費用ですが、多くの事務所では着手金が無料のところや、成功報酬型で依頼できるところがあります。勝訴した場合や示談が成立した場合にのみ報酬が発生する仕組みなら、最初の負担は抑えられます。
また、自分が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付帯していれば、弁護士に支払う費用の大部分を保険金でまかなえます。この特約は年数千円程度の追加で付けられるものが多く、意外と多くの人が加入しています。保険証券を確認して、特約の有無をチェックしてみてください。
なお、どの事務所が良いのか迷ったら、日弁連交通事故相談センターを利用するのが安心です。ここでは弁護士が直接無料で相談に乗ってくれます。電話相談は10分程度、面接相談は30分を同一事案につき原則5回まで無料で利用でき、示談あっせんの手続きも費用がかかりません。中立の立場からアドバイスが得られるため、まずはここで話を聞いてみることをおすすめします。
事故後、最初に取るべき行動ステップ
事故に遭ったとき、落ち着いて次の順序で動いてください。
- 現場での対応:けがの有無にかかわらず、警察に通報して事故証明書を発行してもらいましょう。相手の連絡先、車種、保険会社を必ず控えます。
- 通院と記録の徹底:むち打ちなどの症状が後から出ることもあるため、すぐに病院で診察を受けます。治療費の領収書、通院の記録、レントゲン写真はすべて大切に保管してください。
- 保険会社の提示にはすぐに応じない:示談書にサインする前に、必ず専門家の意見を聞きましょう。示談が成立すると後から覆すのは難しいからです。
- 弁護士相談の予約:日弁連交通事故相談センターや、交通事故に強い弁護士事務所に相談します。このとき、事故証明書、診断書、治療費の領収書を持参すると話がスムーズです。
- 依頼するか決める:相談内容を踏まえ、着手金が無料の事務所や弁護士費用特約の利用可否を確認して依頼を決めます。
一人で抱え込まず、専門家の手を借りる
交通事故の賠償問題は、当事者だけでは対処しきれない複雑な要素がたくさんあります。慰謝料の計算基準、過失割合、後遺障害の認定、休業損害の算定——どれを取っても専門知識が必要です。保険会社の提示を鵜呑みにせず、一度、弁護士に相談してみてください。無料相談の仕組みや弁護士費用特約を活用すれば、費用面の不安も和らぎます。
受け取れるはずの賠償金をしっかり受け取るために、まずは一歩を踏み出してみましょう。日弁連交通事故相談センターへの電話一本から、すべては始まります。